全書籍電子化計画と著作権保護期間の行方

昨年来続いている書籍のデジタル化と、アーカイブ組織、ポータルサイトの動きを分かりやすく解説してくれています。その上で、青空文庫の今後の姿勢が語られており、今後の同種の活動をする組織にとって、大変参考になるページだと思います。
著作者の権利を守りつつ、著作物を文化資産として保存し、それの利活用を促進する活動は、情報提供者、保存組織、サービス提供者、情報利用者、そして技術提供者の利害を一致させて、協力・連携して進めていかなければならない。もう構想段階ではなく、国、政府の施策として、具体的な一歩を踏み出していかなければならないと思う。

アメリカに現れた、トップダウン型の本の電子化の試みは、似通った提案を、世界の各国に生むだろう。
そうなっていくことは、基本的には望ましいことと思う。
これまで私たちが積み上げてきた多少の成果を、大きな構造の中にも位置づけてもらえるよう、包括的なインデックスの作成にあたって、どのような書誌情報が求められるか、ファイルの仕立てはどうあるべきかを学び、検討を加えていきたい。
ただ、青空文庫のような草の根の試みが役割を終えたとは、まだまだいえないのではないかと考える。
我々が提供ファイルの形式として選んでいるテキストには、さまざまなコンピューター処理が可能という、大きなメリットがある。
AmazonやGoogleInternet Archiveなどで、ページ画像に添えられている透明テキストは、決して十分な質を備えたものではない。OCRをかけたものを、そのまま見直しなく貼り込んだレベルで、アルファベットに関してはそれでもかなりの精度があるものの、書体変更や図版、数式、汚れ、折り目などが引き金となって、大きめの乱れが生じている。日本のAmazonで始まった「なか見!検索」の透明テキストは、OCR誤植が満載の状況だ。スキャニングと、信頼性のあるテキストの作成のあいだには、なすべきことが大きく残されており、とりわけ漢字と二種類の仮名を併用する日本語では、課題が大きいことが痛感される。
スキャニングの効率なら、機械化によって大幅に改善できるが、そこから得たテキストの質を高めるには、まだまだかなりの間、人の「心を込めた作業」が求められ続けるはずだ。
著者とその作品への敬意から発した試みにはやはり、存在価値がある。
願わくば、トップダウン型、ボトムアップ型の試みが、呼応し、連携しあって、文化所産を広く分かち合う仕組みが育っていきますように。