続・深刻なシステムの引き継ぎ問題:ITpro

今に始まったことではないが、2007年を前にして、この問題が顕在化してきている。この問題は、システムに限ったことではなく、個人の知識が組織ではなく個人の「頭」の中にあるということが問題になる。この辺を解決していかないと、システム改修に膨大な費用が掛かるとともに、組織としての知識・ノウハウがどんどん失われていくことになる。

システム資産は「要件」と「技術」をコンピュータを使って具現化したものと言える。「要件」は,一般的な業務知識さえあれば,それ自体を理解するのにハイレベルなスキルは必要ないが,文書や口頭で説明されない限り引き継がれない。前任者からの説明がなければ,後任者は考古学者のように,ファイル棚の一角から発掘されるソースコードや仕様書などの破片を解読して要件を想像していくしかない。もう一つの「技術」も,それ自体のスキル習得は座学でも可能だが,それぞれのシステムには開発当時の担当者による工夫や特殊事情がある。オリジナルな工夫や特殊事情が多いほど,開発した本人以外が理解するのが難しい。

 さらに問題を複雑にしているのは,要件と技術が“稼働時”のままとは限らないことである。いったん稼働したシステムには,エンドユーザーの要請や製品/技術の変化により,刻々と機能追加/改変/修理/バージョンアップが加えられる。「A.稼働開始時のシステム」に「B.業務や技術が変質した量」を加えたものが,「C.現在稼働しているシステムの姿」である(A+B=C)。Cを一覧できる資料が整理されていることはほとんどない。

 開発した技術者が現場に残っているうちは,その人の脳みそで,ある程度Cを代替できるが,その人がいなくなった途端に,既存システム資産についての要件と技術が失われる。つまり,現場の2007年問題とは「優秀なベテラン技術者が持つスキルが次の世代に引き継がれないこと」ではない。普通の(または優秀な/劣悪な)技術者が作り,普通の(または優秀な/劣悪な)技術者がメンテナンスしてきたシステム資産を,今の世代の普通の(または優秀な/劣悪な)技術者がきちんと引き継ぐことが困難になっていることである。メインフレームを保守できる人がいなくなってしまうから,新たにCOBOL技術者を雇えばいいというような簡単な問題ではない。